「プログラミングを使った算数の授業ってどんなものだろう」
と気になっている人もいるでしょう。今の子どもの親世代はプログラミング教育なんてなかったので、未知数ですよね。
この記事を読めば次のことがわかります。
・算数でプログラミング要素を取り入れる目的
・プログラミングが算数教育にもたらすメリット
・学年ごとの取り組み
ただ機械的に答えを求めるだけではない、令和の学び方をご紹介します!
1.プログラミングを使った算数授業の目的
現在の小学校では、算数、理科、社会、総合学習などの各単元の中で、プログラミング教育が実施されています。
この章では、プログラミングを使った算数授業がどのような目的を持って行われ、何を重視しているのかを詳しく解説します!
1-1.プログラミング的思考力を伸ばす
プログラミングを使った算数授業の狙いの1つが、プログラミング的思考の育成です。
プログラミングとはコンピュータに行わせる命令を書くことですが、その過程では次のような力(=プログラミング的思考力)が求められます。
・課題を論理的に解く力
・問題解決のための戦略を考える力
・ゴールへの道筋をステップバイステップで組み立てる思考力
子どもたちが算数の授業でプログラミングする際にも、上記のようなプログラミング的思考力が必要です。
プログラミングで正三角形の作図をする場合だと・・・
算数の授業で習う基礎知識を用いながら、コンピュータにさせたい動作を次の手順で考えます。
・コンピュータにどのような動きをさせたいのか自分の考えを明確にする
・実行したい動きを順序立てて考える
・コンピュータに出す命令を考える
・自分が考えた結果が正確に実行されるように試行錯誤を繰り返す
このように物事を論理的に考えて解決する体験を通して、「プログラミング的思考力」を伸ばしていくことが、大きな目的です。
単なる道具としてプログラミングを使い、何かを作るのがゴールではないんだね!
1-2.算数の学びをより確実なものにする
算数の知識を使ったプログラミングを体験することで、「算数の学び」をより確実なものにすることも目的の1つです。
プログラミングで正三角形の作図をする場合だと・・・
作図には次のような算数で習う知識が必要です。
・正三角形の内角はすべて60度
・正三角形の外角はすべて120度
・3辺の長さは同じ
実際に自分の手を動かしながらプログラミングすると、「内角60度」「外角の位置」「辺の長さ」などが体感できます。
教科書の文字のみで知識を頭に入れるよりも、はるかに算数の学びを深められて、知識の定着力もぐっと上がります。
1-3.プログラミングする過程を重視している
最後に、プログラミングを使った算数授業では「プログラミングする過程」に重点を置いています。
完成したプログラムや、得た結果だけでなく、「どのようにその結果を導き出したのか」、「何を試し、何を学んだのか」を重視するのです。
プログラムが完璧に動作しなくても、その過程で何が起こったのか、どう試行錯誤すればよいのかを検討すること自体に意味があります。
また、プログラミングをする過程で得られる「モノづくりの楽しさ」や「達成感」も大切なポイントです。
プログラミングの楽しさに気付き、達成感を得ることで、算数の授業に意欲的な姿勢で取り組むことが期待されています。
2.プログラミングが算数教育に与えるメリット
「プログラミングって算数にどう影響するの?」
と疑問を持っている人も多いと思います。そこでこの章では、プログラミング学習が算数にもたらす3つのメリットを具体的に見ていきましょう。
2-1.算数の概念を視覚的に理解できる
1つめのメリットは、算数の概念を視覚的に理解できることです。
算数というと、抽象的な数字や計算式、記号が多く、具体的に何を指すのか分かりづらい部分もありますよね。
例えば、分数計算や面積の求め方など、教科書だけ見ていてもピンと来ない子も多いでしょう。
しかし、プログラミング学習では、見ているだけでは理解しきれない算数の概念を、具体的かつ視覚的に表現するツールが豊富にあります。
例えば、キャラクターを自分で操作して進行方向や距離を指定することで、直線上の距離や角度といった概念を習得できます。
また、プログラミングをする上で必要な「条件分岐」や「ループ」といった概念は、少し大きな数字を扱う算数の「場合の数」や「順列・組み合わせ」と同じような考え方が求められます。
こうした抽象的な概念も、プログラムを作成する過程で具体的に体験することで、自然と理解が深まります。
つまずきがちな算数の抽象的な概念を、具体的かつ視覚的に理解することが出来るようになるよ!
2-2.問題解決能力を高められる
次に挙げられるメリットは、問題解決能力が高まるという点。
プログラミングでは、あらかじめ与えられた課題を解決するために、自分の考えを論理的に組み立て、それをコードに落とし込んでいきます。これがまさに、問題解決力を鍛えるプロセスそのものです。
さらには、作成したプログラムが思うように動かない時には、どこが間違っているのかを自分で考え、試行錯誤しながら修正していかなければなりません。
これを繰り返していくことで、論理的思考力や創造力を育むことができます。
それと同時に、自分で解決できた時の喜びや達成感は自信につながります。将来、未知の問題や難題に直面した際も、思考をベースに解決策を見つけ出す力が培われます。
ただ単に答えを出す力だけではなく、道筋を自分で立てて構築する力も身につけられるよ!
2-3.算数苦手な子も授業が楽しくなる
3つめのメリットは、算数が苦手と感じている子でも授業が楽しくなるということ。
プログラミング学習は、コードを書くだけではありません。
自分が作成したコードが動き、何かを生み出す楽しさを身近に感じることができます。
この楽しさが、算数の授業を苦手と感じている子たちでも、算数の概念に親しみを持つきっかけになります。
また、自分の考えや想像を形にする喜びは、結果的に学習意欲や自己表現力を養います。
子どもたちが自分で動くキャラクターや物語を生み出す過程は、オリジナルのアイデアや想像力を活性化させ、算数に対するマイナスイメージを払拭します。
通常の算数の授業が苦手な子も、プログラミングには興味を持って挑戦し、新しい学び方に目覚める可能性があるのです。
算数が苦手でも、プログラミングは十分楽しめるよ!
3.プログラミングを使った算数の実践例
各教科書出版社は、プログラミング専用サイトを用意したり、趣向を凝らした算数科向けプログラミング学習を用意しています。
ここでは、どのような授業が実際に行われているのか、学年ごとに具体的な学習例を取り上げます。
3-1.【1、2、3年生】プログラミングゲーム
ゲームを通してプログラミング的思考が育めるような学習を行います。
例えば、大日本図書の場合、下記のような内容になっています。
「1ます進む」「右にまわる」といった命令を組み合わせてキャラクターをゴールまで進ませる道筋を考えます。
「10もどる」「100進む」などの命令を組み合わせて、ゴールとなるマスまで進む方法を考えます。「くりかえし」の命令も使えるので、1年生よりもステップアップしています。
10から15までの好きな数を1つ選んでもらい、もう1人が3つの質問をすることで、選んだ数を当てるゲームです。
出典:大日本図書
3-2.【4年生】わり算の筆算
同じく大日本図書の4年生では、わり算の筆算をプログラミング学習で取り上げています。
プログラムを作ることで、1つひとつの計算手順を視覚的に捉えられ、わり算の筆算の理解を深められるようになっています。
具体的には、「たてる」「かける」「ひく」「おろす」という決まった手順(=アルゴリズム)を行うことで筆算が成り立つことを体感します。
アルゴリズムという概念に触れることで、算数への興味を広げるきっかけにもなっています。
出典:大日本図書
3-3.【5年生】正多角形を作図する
啓林館や多くの教科書出版社で、正多角形の作図をカリキュラムに取り入れています。
プログラミング環境はScratchを主に用いています。
正多角形の作図は、「4センチ進む」「左に60度まわる」といった命令を組み合わせてプログラミングすることがポイントです。
このとき、以下のような内容を学ぶことが重視されています。
・どのような命令を組み合わせればよいか自分で考えること
・正多角形の性質に気付く
・手書きよりも早く正確に描けることに気付く
技術的に作図できるようになることが目的ではなく、その過程でさまざまな気付きが生まれるような授業がされています。
出典:啓林館
3-4.【6年生】グラフを作図する
東京書籍では、「Edu Town」というサイトにて、以下のプログラミング学習を提供しています。
・中央値を求める
・平均値を求める
・最頻値を求める
・数を並べかえる
「ますりん」というキャラクターに指示を出して、課題をクリアしていくという内容です。
プログラミングによって、授業で習った内容をふまえて自分で表現する力が育つよう、工夫されています。
出典:東京書籍
まとめ
昭和や平成の学び方とは違い、プログラミングを通して「自分で考える力」を伸ばす学習内容が特徴的です。AI時代が到来すると言われている中、こうした「思考力」を磨くことは将来的に大いに役立つでしょう。
プログラミングを使って思考力を伸ばすことは、家庭でも取り組み可能です。未来が開けるような学びを子どもたちに届けたいですね!